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こうして僕は

六年前 サハラ砂漠で飛行機が故障するまで

心を許して話せる相手に出会うこともなく

一人で生きてきた

飛行機は エンジンのどこかが壊れていた

整備士も乗客も乗せていなかったので

僕は難しい修理の仕事を一人でやり遂げるしかなかった

死活(しかつ)問題だった

飲み水は一週間分あるかないかだった

最初の夜

僕は人の住む場所から千マイルも離れた砂の上で眠った

大海原(おおうなばら)を筏(いかだ)で漂流する遭難者より

ずっと孤独だった

だから 夜明けに小さな可愛らしい声で起こされた時

僕がどんなに驚いたか想像してみてほしい

その声は こう言った

「お願い、羊の絵を書いて。」

「え?」

「羊を書いて。」

雷(かみなり)に打たれたみたいに飛び起きると

目を擦って辺りを見回した

そこには、とても不思議な子供が一人いて

僕を真剣に見つめていた

僕は突然現れたその子供を目を丸くして見つめた

何度も言うけれど

人の住む所から千マイルも離れていたのだ

しかしその子は

道に迷っているようには見えなかった

疲れや飢えや渇きで死にそうになっているようにも

怖がっているようにも見えなかった

人の住む所から千マイルも離れた砂漠を真ん中にいながら

途方に暮れた迷子と言った様子は少しもなかったのだ

ようやく口が聞けるようになると、僕はその子に尋ねた

「君は、こんな所で何をしているの?」

しかしその子はとても大切なことのように 静かに繰り返すだけ

「お願い、羊の絵を書いて。」

馬鹿げた話だが

人の住む所から千マイルも離れて

死の危険に曝(さら)されているというのに

僕はその子に言われるままに

ポケットから一枚の紙切れ(かみきれ)と万年筆を取り出していた

だけどそこで

僕が一生懸命勉強してきたのは

地理と歴史と算数と文法だけだったことを思い出して

少し不機嫌になりながら

絵は書けないんだと その子に言った。

「そんなの構わないよ。羊を書いて。」

僕は羊の絵なんか書いたことがなかったので

自分に書けるたった二つの絵のうちの一つを書いてあげた

ボアの外側の絵だ

その時男の子がこういうのを聞いて

僕はビックリした

「違う違う。

ボアに飲み込まれた象なんて要らないよ。

ボアはとっても危険だし、

象はけっこう場所塞(ふさ)ぎだから。

僕の所はとっても小さいんだ。

ほしいのは羊。羊を書いて。」

そこで僕は、羊を書いた。

「んー、ダメだよ。この羊はひどい病気だ。

違うのを書いて。」

僕は書き直した。

男の子は僕を気遣って、優しく微笑んだ。

「よく見て、これは羊じゃあないでしょう。

雄羊(おひつじ)だよね。

角(つの)があるもの。」

そこで僕はまた書き直した。

けれどそれも前の二つと同じように拒絶された。

「この羊は年を取りすぎているよ。

僕、長生きする羊がほしいの。」

我慢も限界に近づいていた

修理を始めなければと焦っていた

僕は

ざっと書きなぐった絵を男の子に投げ渡した

「これは羊の箱だ。

君が欲しがっている羊はこの中にいるよ。」

すると驚いたことに

この小さな審査員(しんさいん)の顔が

ぱっと輝いたのだ

「ぴったりだよ。

僕がほしかったのは、この羊さ。

ねえ、この羊、草をいっぱい食べるかな?」

「どうして?」

「僕の所はとっても小さいから。」

「大丈夫だよ。

君にあげたのはとっても小さな羊だからね。」

「そんなに小さくないよ。

あれ、羊は寝ちゃったみたい。」

こうして僕は

この小さな王子さまと知り合いになった

王子さまがとこから来たのか分かるまで

かなり時間がかかった

王子さまは

僕にはたくさん質問してくるのに

こちらからの質問にはほとんど耳を貸さなかったのだ

少しずつ全てが明らかになっていったのは

王子さまが偶々口にした言葉からだった

それは

初めて僕の飛行機を見た時のことだ

「何、これ?」

「飛行機。空を飛ぶんだ。僕の飛行機さ。」

空を飛べると自慢げに話していたら

王子さまは大声で言った

「え?じゃあ、君は空から落(お)っこちてきたんだ。」

「まあ、そうだなあ。」

「あ、それは可笑しいね。」

王子さまは可愛い声で笑い出したが

僕はかなりいらいらした

自分を襲った災難を

真面目に受け取ってほしかったのだ

しかし王子さまは続けてこう言った

「それじゃ、君も空から来たんだね。

どの星から来たの?」

その瞬間

王子さまがなぜここにいるのかという疑問に

さっと光が差し込んだように感じて

僕はすぐに尋ねた

「君は、よその星から来たのかい?」

しかし王子さまは答えず

飛行機を見て、そっと首を振っただけだった

「これに乗ってきたのなら、

そんなに遠くからじゃないよね。」

そう言うと 物思いに沈んでいった

王子さまはポケットから羊の絵を取り出して

大切そうに眺めていた。

「君はどこから来たの?

その羊をどこへ連れて行くつもりなの?」

「この箱がいいのわね。

夜になると、羊の小屋になるって所だよ。」

「そうだね。

いい子にしていたら、

昼間羊を繋いでおく綱もあげるよ。

それに、綱を結んでおく杭(くい)もね。」

「羊を繋いでおくの?

可笑しいよ、そんなの。」

「でも、繋いでおかなかったら、

勝手にあちこち歩き回って、

どこかいなくなっちゃうだろ。」

すると、僕の友達はまた笑い出した。

「羊がどこへ行くっていうのさ。」

「どこにでも。ずっとまっすぐ歩いていって…」

「大丈夫だよ、僕の所は本当に小さいからね。

まっすぐに行っても

そんなに遠くには行けないよ。」

こうして僕は

二つ目のとても大切なことを知った

王子さまのいた星は家一軒(いっけん)より

やや大きいくらいの大きさなのだ。

それほど驚きはしなかった

地球や木星・火星・金星のように

名前のある巨大な星以外にも

望遠鏡でも見つからないほど小さな星が

何百とあることを知っていたからだ

天文学者がそんな星を発見すると

名前の代わりに番号を付ける

例えば、小惑星325と言ったように。

王子さまがやって来た星は

小惑星B612だと思う

1909年にトルコの天文学者が

一度だけ望遠鏡で観測した星だ

天文学者は国際天文家会議で

自分の発見について堂々と発表した

しかしその時は

服装のせいで

誰にも信じてもらえなかった

大人なんて そんなもんだ

しかし

小惑星B612に

名誉挽回(めいよばんかい)の幸運が訪れた

トルコの独裁者が

国民にヨーロッパ風の服装を着るように命令し

従わなければ死刑ということになったのだ

そこで天文学者は

1920年、今度は

もっと洗練(せんれん)された服装で同じ発表を繰り返した

この時はみんなが彼の言うことを信じた。

この星のことをこんなに詳しく話して

番号まで教えるのは

大人たちのせいだ

大人は数字が好きだ

数字以外には興味がない

新しい友達のことを話しても

どんな声か

どんな遊びが好きか

蝶々を集めているかと言った

大切なことは何も聞いて来ない

何歳か

何人兄弟か

お父さんの年収はいくらかと言った

数字のことばかり聞いて来て

それですっかり知ったつもりになる

「王子さまは本当にいたよ。

可愛かったし、笑っていたし、

羊を欲しがっていた。

だって、羊を欲しがるってことは、

間違いなくその人が

本当にいるってことの証拠だからね。」

こんな風に話しても

大人は肩を竦(すく)め

子供扱いするだけだ。

しかし

「王子さまが来た星は小惑星B612だよ」と言えば

大人は納得して

それ以上余計なことは聞いて来ない

大人なんてそんなもんだ

でも 悪く思ってはいけないよ

子供は大人に対して

広い心で接してあげなきゃね

でも 生きるということがどういうことなのか

よく分かっている僕たちには

数字なんかどうでもいい

本当だったら僕は

この物語をお伽話のように始めたかった

「昔々、自分より本の少し大きいだけの星に暮らしている

小さな王子さまがいました

王子さまは友達を欲しがっていました。」

生きるということがどういうことなのか分かっている人には

こういう言い方のほうが

ずっと本当らしく聞こえるだろう

僕は この本を軽々しく読まれたくない

こう言った思い出話を語ることは

僕にとって 本当に辛い

僕の友達が羊を連れて行ってしまって

もう六年になる

こうして彼のことを書くのは

彼を忘れないためだ

友達を忘れてしまうのは悲しい

誰にでも友達がいるわけではない

それに

僕も数字にしか興味のない大人になってしまうかもしれない

そうならないために僕は

絵の具箱と鉛筆を買った

六歳でボアの外側と内側を書いて以来

何も書いていなかった僕にとって

この年でもう一度絵を書くのは大変なことだった

出来るだけ

本物そっくりな肖像画(しょうぞうが)を書いてみるつもりだ

でも ちゃんと書けるかどうかは

自信がない

一枚いい物が書けても

その次はまるで似ていないかもしれない

背丈(せたけ)が難しいし

服の色も迷ってしまう

手探りでやってみるが

もっと大事な細かい部分を間違えてしまうかもしれない

でも そこは大目に見てほしい

王子さまは

詳しいことは何も説明してくれなかったのだ

恐らく彼は

僕のことを自分と同じ仲間だと思ったのだろう

しかし残念ながら僕は

箱の中の羊を見ることが出来ない

少しばかり大人になってしまったのかもしれない

年を取ったのだ

日を追うごとに僕は

王子さまの星のことや

そこからの旅立ち

これまでの旅について知るようになっていった

王子さまが偶々口にした言葉で

少しずつ様子が分かってきた

こうして三日目に

バオバブをめぐる大騒動を知った

これも、羊のお陰だった

王子さまが急に心配らしくなって

こう聞いてきたのだ

「羊が小さな樹も食べるって、

本当なんでしょう?」

「うん、本当だよ。」

「あぁ、よかった。」

羊が小さな樹を食べることが

なぜそんなに大事なことなのか

僕には分からなかった

しかし 王子さまは更にこう聞いてきた

「だったら、バオバブも食べるよね。」

僕は王子さまに

バオバブは小さな樹じゃなくて

教会の建物と同じぐらい大きな樹だから

象の群れを丸ごと連れてきても

たった一本のバオバブも

食べきれないだろうと教えてあげた

象の群れを思い描いて

王子さまは笑った。

「上に上に積み重ねなきゃいけないね。」

しかし、続けてなかなか鋭い指摘をした

「バオバブだって、大きくなる前は小さいんだよね。」

「そりゃそうだよ。

それにしても、

どうして羊に小さなバオバブを食べてもらいたいんだい?」

「何を言ってるの?

そんなの当たり前でしょ。」

僕は

一人でこの難問を解き明かすことになり

散々頭を捻(ひね)った

つまり こういうことだ

王子さまの星には

他の星と同じように

良い草と悪い草があった

良い草は良い種から育ち

悪い草は悪い種から育つ

しかし 種は目に見えない

土の中でひっそりと眠っている

その一つが気まぐれに目を覚ますと

伸びをしておずおずと

あどけない小さな茎(くき)を太陽に向かって伸ばし始める

それが赤蕪(あかかぶ)や薔薇だったら

そのままにしておいて構わない

でも、悪い草だと分かったら

すぐに抜き取らなくてはいけない

王子さまの星には

そんな恐ろしい種があった

バオバブの種だ

星の土は

何処も彼処(かしこ)もバオバブの種だらけだった

少しでも抜くのが遅れると

バオバブはもう手が付けられなくなる

星全体を覆いつくし

根っこが突き抜け

穴を開けてしまう

小さな星だと

殖(ふ)えすぎたバオバブで

破裂してしまう

「決まりに出来るかどうかだね。

毎朝、自分の身支度(みじたく)が済んだら、

星の手入れに取り掛かる。

芽(め)を出したばかりの薔薇とバオバブは

よく似ているんだけど、

それを見分けて、バオバブだと分かったら、

すぐに抜いてしまう。

手間は掛かるけど、

とっても簡単なことだよ。」

「偶には仕事を後回しにしも大丈夫な時ってあるけど、

バオバブでそんなことをしたら、

取り返しがつかなくなるんだ。

例えばね、ある星に、

怠け者が住んでいたんだけど、

その人は三本のバオバブを

ほったらかしにしていたばかりに…」

僕は 王子さまの話すとおりに

その星の絵を書いた

星より巨大な三本のバオバブと途方に暮れる怠け者。

お説教(せっきょう)臭いことを言うのは

あんまり好きじゃないけれど

バオバブの脅威(きょうい)は

地球ではほとんど知られていないし

小惑星で道に迷った人が危険な目に遭う可能性は

あまりにも大きい

だから僕は 一度だけ普段の慎みを忘れて

こう言っておこう

「おい、子供たち、バオバブに気を付けろ!」

僕は友人たちに警告を与えるために

一生懸命この絵を仕上げた

苦労して書いた価値があった

他はこれほどうまくいかなかった

バオバブを書いた時は

切羽詰(せっぱつま)って

気持ちが高ぶっていたのだ

ああ、小さな王子さま

こうして僕は少しずつ

細やかで憂鬱な君の人生を理解していった

長い間、君には美しい夕日しか

心を慰めるものがなかったことも

僕がこの秘密を知ったのは

四日目に朝 君がこう言った時だ

「僕、夕日が大好きなんだ。

夕日を見に行こうよ。」

「でも、待たなきゃね。」

「待つって、何を?」

「日が沈むのをさ。」

君はとてもビックリしたようだった

そして すぐに笑い出した

「僕、まだ自分の星にいるつもりになっていたよ。」

「そうだね。」

誰もが知っているように

アメリカが正午(しょうご)の時には

フランスは夕暮れだ

だから、一分でフランスに飛んでいけたら

夕日を見ることが出来るけど

残念ながら フランスは遠すぎる

だけど君の小さな星では

本の少し椅子を動かすだけでいい

そうすれば、見たい時にいつでも

黄昏(たそがれ)を眺めていられる。

「僕ね、一日に44回も夕日を見たことがあるよ。」

そう言って、暫くしてから、こう付け加えた。

「ねぇ 悲しくてたまらない時って

夕日が恋しくなるよね。」

「44回も夕日を見た日は

悲しくてたまらなかったのかい?」

しかし、王子さまは答えなかった。

こうして僕は

六年前 サハラ砂漠で飛行機が故障するまで

心を許して話せる相手に出会うこともなく

一人で生きてきた

飛行機は エンジンのどこかが壊れていた

整備士も乗客も乗せていなかったので

僕は難しい修理の仕事を一人でやり遂げるしかなかった

死活(しかつ)問題だった

飲み水は一週間分あるかないかだった

最初の夜

僕は人の住む場所から千マイルも離れた砂の上で眠った

大海原(おおうなばら)を筏(いかだ)で漂流する遭難者より

ずっと孤独だった

だから 夜明けに小さな可愛らしい声で起こされた時

僕がどんなに驚いたか想像してみてほしい

その声は こう言った

「お願い、羊の絵を書いて。」

「え?」

「羊を書いて。」

雷(かみなり)に打たれたみたいに飛び起きると

目を擦って辺りを見回した

そこには、とても不思議な子供が一人いて

僕を真剣に見つめていた

僕は突然現れたその子供を目を丸くして見つめた

何度も言うけれど

人の住む所から千マイルも離れていたのだ

しかしその子は

道に迷っているようには見えなかった

疲れや飢えや渇きで死にそうになっているようにも

怖がっているようにも見えなかった

人の住む所から千マイルも離れた砂漠を真ん中にいながら

途方に暮れた迷子と言った様子は少しもなかったのだ

ようやく口が聞けるようになると、僕はその子に尋ねた

「君は、こんな所で何をしているの?」

しかしその子はとても大切なことのように 静かに繰り返すだけ

「お願い、羊の絵を書いて。」

馬鹿げた話だが

人の住む所から千マイルも離れて

死の危険に曝(さら)されているというのに

僕はその子に言われるままに

ポケットから一枚の紙切れ(かみきれ)と万年筆を取り出していた

だけどそこで

僕が一生懸命勉強してきたのは

地理と歴史と算数と文法だけだったことを思い出して

少し不機嫌になりながら

絵は書けないんだと その子に言った。

「そんなの構わないよ。羊を書いて。」

僕は羊の絵なんか書いたことがなかったので

自分に書けるたった二つの絵のうちの一つを書いてあげた

ボアの外側の絵だ

その時男の子がこういうのを聞いて

僕はビックリした

「違う違う。

ボアに飲み込まれた象なんて要らないよ。

ボアはとっても危険だし、

象はけっこう場所塞(ふさ)ぎだから。

僕の所はとっても小さいんだ。

ほしいのは羊。羊を書いて。」

そこで僕は、羊を書いた。

「んー、ダメだよ。この羊はひどい病気だ。

違うのを書いて。」

僕は書き直した。

男の子は僕を気遣って、優しく微笑んだ。

「よく見て、これは羊じゃあないでしょう。

雄羊(おひつじ)だよね。

角(つの)があるもの。」

そこで僕はまた書き直した。

けれどそれも前の二つと同じように拒絶された。

「この羊は年を取りすぎているよ。

僕、長生きする羊がほしいの。」

我慢も限界に近づいていた

修理を始めなければと焦っていた

僕は

ざっと書きなぐった絵を男の子に投げ渡した

「これは羊の箱だ。

君が欲しがっている羊はこの中にいるよ。」

すると驚いたことに

この小さな審査員(しんさいん)の顔が

ぱっと輝いたのだ

「ぴったりだよ。

僕がほしかったのは、この羊さ。

ねえ、この羊、草をいっぱい食べるかな?」

「どうして?」

「僕の所はとっても小さいから。」

「大丈夫だよ。

君にあげたのはとっても小さな羊だからね。」

「そんなに小さくないよ。

あれ、羊は寝ちゃったみたい。」

こうして僕は

この小さな王子さまと知り合いになった

王子さまがとこから来たのか分かるまで

かなり時間がかかった

王子さまは

僕にはたくさん質問してくるのに

こちらからの質問にはほとんど耳を貸さなかったのだ

少しずつ全てが明らかになっていったのは

王子さまが偶々口にした言葉からだった

それは

初めて僕の飛行機を見た時のことだ

「何、これ?」

「飛行機。空を飛ぶんだ。僕の飛行機さ。」

空を飛べると自慢げに話していたら

王子さまは大声で言った

「え?じゃあ、君は空から落(お)っこちてきたんだ。」

「まあ、そうだなあ。」

「あ、それは可笑しいね。」

王子さまは可愛い声で笑い出したが

僕はかなりいらいらした

自分を襲った災難を

真面目に受け取ってほしかったのだ

しかし王子さまは続けてこう言った

「それじゃ、君も空から来たんだね。

どの星から来たの?」

その瞬間

王子さまがなぜここにいるのかという疑問に

さっと光が差し込んだように感じて

僕はすぐに尋ねた

「君は、よその星から来たのかい?」

しかし王子さまは答えず

飛行機を見て、そっと首を振っただけだった

「これに乗ってきたのなら、

そんなに遠くからじゃないよね。」

そう言うと 物思いに沈んでいった

王子さまはポケットから羊の絵を取り出して

大切そうに眺めていた。

「君はどこから来たの?

その羊をどこへ連れて行くつもりなの?」

「この箱がいいのわね。

夜になると、羊の小屋になるって所だよ。」

「そうだね。

いい子にしていたら、

昼間羊を繋いでおく綱もあげるよ。

それに、綱を結んでおく杭(くい)もね。」

「羊を繋いでおくの?

可笑しいよ、そんなの。」

「でも、繋いでおかなかったら、

勝手にあちこち歩き回って、

どこかいなくなっちゃうだろ。」

すると、僕の友達はまた笑い出した。

「羊がどこへ行くっていうのさ。」

「どこにでも。ずっとまっすぐ歩いていって…」

「大丈夫だよ、僕の所は本当に小さいからね。

まっすぐに行っても

そんなに遠くには行けないよ。」

こうして僕は

二つ目のとても大切なことを知った

王子さまのいた星は家一軒(いっけん)より

やや大きいくらいの大きさなのだ。

それほど驚きはしなかった

地球や木星・火星・金星のように

名前のある巨大な星以外にも

望遠鏡でも見つからないほど小さな星が

何百とあることを知っていたからだ

天文学者がそんな星を発見すると

名前の代わりに番号を付ける

例えば、小惑星325と言ったように。

王子さまがやって来た星は

小惑星B612だと思う

1909年にトルコの天文学者が

一度だけ望遠鏡で観測した星だ

天文学者は国際天文家会議で

自分の発見について堂々と発表した

しかしその時は

服装のせいで

誰にも信じてもらえなかった

大人なんて そんなもんだ

しかし

小惑星B612に

名誉挽回(めいよばんかい)の幸運が訪れた

トルコの独裁者が

国民にヨーロッパ風の服装を着るように命令し

従わなければ死刑ということになったのだ

そこで天文学者は

1920年、今度は

もっと洗練(せんれん)された服装で同じ発表を繰り返した

この時はみんなが彼の言うことを信じた。

この星のことをこんなに詳しく話して

番号まで教えるのは

大人たちのせいだ

大人は数字が好きだ

数字以外には興味がない

新しい友達のことを話しても

どんな声か

どんな遊びが好きか

蝶々を集めているかと言った

大切なことは何も聞いて来ない

何歳か

何人兄弟か

お父さんの年収はいくらかと言った

数字のことばかり聞いて来て

それですっかり知ったつもりになる

「王子さまは本当にいたよ。

可愛かったし、笑っていたし、

羊を欲しがっていた。

だって、羊を欲しがるってことは、

間違いなくその人が

本当にいるってことの証拠だからね。」

こんな風に話しても

大人は肩を竦(すく)め

子供扱いするだけだ。

しかし

「王子さまが来た星は小惑星B612だよ」と言えば

大人は納得して

それ以上余計なことは聞いて来ない

大人なんてそんなもんだ

でも 悪く思ってはいけないよ

子供は大人に対して

広い心で接してあげなきゃね

でも 生きるということがどういうことなのか

よく分かっている僕たちには

数字なんかどうでもいい

本当だったら僕は

この物語をお伽話のように始めたかった

「昔々、自分より本の少し大きいだけの星に暮らしている

小さな王子さまがいました

王子さまは友達を欲しがっていました。」

生きるということがどういうことなのか分かっている人には

こういう言い方のほうが

ずっと本当らしく聞こえるだろう

僕は この本を軽々しく読まれたくない

こう言った思い出話を語ることは

僕にとって 本当に辛い

僕の友達が羊を連れて行ってしまって

もう六年になる

こうして彼のことを書くのは

彼を忘れないためだ

友達を忘れてしまうのは悲しい

誰にでも友達がいるわけではない

それに

僕も数字にしか興味のない大人になってしまうかもしれない

そうならないために僕は

絵の具箱と鉛筆を買った

六歳でボアの外側と内側を書いて以来

何も書いていなかった僕にとって

この年でもう一度絵を書くのは大変なことだった

出来るだけ

本物そっくりな肖像画(しょうぞうが)を書いてみるつもりだ

でも ちゃんと書けるかどうかは

自信がない

一枚いい物が書けても

その次はまるで似ていないかもしれない

背丈(せたけ)が難しいし

服の色も迷ってしまう

手探りでやってみるが

もっと大事な細かい部分を間違えてしまうかもしれない

でも そこは大目に見てほしい

王子さまは

詳しいことは何も説明してくれなかったのだ

恐らく彼は

僕のことを自分と同じ仲間だと思ったのだろう

しかし残念ながら僕は

箱の中の羊を見ることが出来ない

少しばかり大人になってしまったのかもしれない

年を取ったのだ

日を追うごとに僕は

王子さまの星のことや

そこからの旅立ち

これまでの旅について知るようになっていった

王子さまが偶々口にした言葉で

少しずつ様子が分かってきた

こうして三日目に

バオバブをめぐる大騒動を知った

これも、羊のお陰だった

王子さまが急に心配らしくなって

こう聞いてきたのだ

「羊が小さな樹も食べるって、

本当なんでしょう?」

「うん、本当だよ。」

「あぁ、よかった。」

羊が小さな樹を食べることが

なぜそんなに大事なことなのか

僕には分からなかった

しかし 王子さまは更にこう聞いてきた

「だったら、バオバブも食べるよね。」

僕は王子さまに

バオバブは小さな樹じゃなくて

教会の建物と同じぐらい大きな樹だから

象の群れを丸ごと連れてきても

たった一本のバオバブも

食べきれないだろうと教えてあげた

象の群れを思い描いて

王子さまは笑った。

「上に上に積み重ねなきゃいけないね。」

しかし、続けてなかなか鋭い指摘をした

「バオバブだって、大きくなる前は小さいんだよね。」

「そりゃそうだよ。

それにしても、

どうして羊に小さなバオバブを食べてもらいたいんだい?」

「何を言ってるの?

そんなの当たり前でしょ。」

僕は

一人でこの難問を解き明かすことになり

散々頭を捻(ひね)った

つまり こういうことだ

王子さまの星には

他の星と同じように

良い草と悪い草があった

良い草は良い種から育ち

悪い草は悪い種から育つ

しかし 種は目に見えない

土の中でひっそりと眠っている

その一つが気まぐれに目を覚ますと

伸びをしておずおずと

あどけない小さな茎(くき)を太陽に向かって伸ばし始める

それが赤蕪(あかかぶ)や薔薇だったら

そのままにしておいて構わない

でも、悪い草だと分かったら

すぐに抜き取らなくてはいけない

王子さまの星には

そんな恐ろしい種があった

バオバブの種だ

星の土は

何処も彼処(かしこ)もバオバブの種だらけだった

少しでも抜くのが遅れると

バオバブはもう手が付けられなくなる

星全体を覆いつくし

根っこが突き抜け

穴を開けてしまう

小さな星だと

殖(ふ)えすぎたバオバブで

破裂してしまう

「決まりに出来るかどうかだね。

毎朝、自分の身支度(みじたく)が済んだら、

星の手入れに取り掛かる。

芽(め)を出したばかりの薔薇とバオバブは

よく似ているんだけど、

それを見分けて、バオバブだと分かったら、

すぐに抜いてしまう。

手間は掛かるけど、

とっても簡単なことだよ。」

「偶には仕事を後回しにしも大丈夫な時ってあるけど、

バオバブでそんなことをしたら、

取り返しがつかなくなるんだ。

例えばね、ある星に、

怠け者が住んでいたんだけど、

その人は三本のバオバブを

ほったらかしにしていたばかりに…」

僕は 王子さまの話すとおりに

その星の絵を書いた

星より巨大な三本のバオバブと途方に暮れる怠け者。

お説教(せっきょう)臭いことを言うのは

あんまり好きじゃないけれど

バオバブの脅威(きょうい)は

地球ではほとんど知られていないし

小惑星で道に迷った人が危険な目に遭う可能性は

あまりにも大きい

だから僕は 一度だけ普段の慎みを忘れて

こう言っておこう

「おい、子供たち、バオバブに気を付けろ!」

僕は友人たちに警告を与えるために

一生懸命この絵を仕上げた

苦労して書いた価値があった

他はこれほどうまくいかなかった

バオバブを書いた時は

切羽詰(せっぱつま)って

気持ちが高ぶっていたのだ

ああ、小さな王子さま

こうして僕は少しずつ

細やかで憂鬱な君の人生を理解していった

長い間、君には美しい夕日しか

心を慰めるものがなかったことも

僕がこの秘密を知ったのは

四日目に朝 君がこう言った時だ

「僕、夕日が大好きなんだ。

夕日を見に行こうよ。」

「でも、待たなきゃね。」

「待つって、何を?」

「日が沈むのをさ。」

君はとてもビックリしたようだった

そして すぐに笑い出した

「僕、まだ自分の星にいるつもりになっていたよ。」

「そうだね。」

誰もが知っているように

アメリカが正午(しょうご)の時には

フランスは夕暮れだ

だから、一分でフランスに飛んでいけたら

夕日を見ることが出来るけど

残念ながら フランスは遠すぎる

だけど君の小さな星では

本の少し椅子を動かすだけでいい

そうすれば、見たい時にいつでも

黄昏(たそがれ)を眺めていられる。

「僕ね、一日に44回も夕日を見たことがあるよ。」

そう言って、暫くしてから、こう付け加えた。

「ねぇ 悲しくてたまらない時って

夕日が恋しくなるよね。」

「44回も夕日を見た日は

悲しくてたまらなかったのかい?」

しかし、王子さまは答えなかった。

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